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湖を望む静かな都会の湯処——松江しんじ湖温泉(島根県松江市)

島根県松江市にある松江しんじ湖温泉。筆者は「松江ニューアーバンホテル」の温泉を日帰りで利用した。派手さはないが、街と自然が穏やかに調和するこの地には、都会的な便利さと湖の静けさが共存していた。

宍道湖を望む眺望 #

泉質そのものは記憶に残っていないが、最も印象的だったのは温泉から望む宍道湖の眺望である。高台に位置する「松江ニューアーバンホテル」の浴場からは、湖面を一望でき、宍道湖に面した高台から望む景色はとても開放的で、視界いっぱいに湖面が広がっていた。時間帯こそ夕方ではなかったが、その場に立つだけで十分に非日常を感じさせる絶景だった。

宍道湖は汽水湖としても知られ、夕日の名所として多くの観光客が訪れるスポットでもある。湖畔にはベンチが整備された場所もあり、日常的に地元の人々が散歩したり、観光客がカメラを構えたりと、穏やかな時間が流れていた。温泉の効能だけでなく、景色による癒し効果もこの地の大きな魅力の一つだ。

松江の街と一畑百貨店の記憶 #

筆者は松江しんじ湖温泉へJRでアクセスした。駅から温泉地まではそれほど距離がなく、電車旅でも不便は感じなかった。訪問当時、松江駅前には「一畑百貨店」が営業しており、ローカル感のある都市型百貨店として、ちょっとした買い物や待ち時間を潰すのに重宝していた記憶がある。

この百貨店は2024年に惜しまれつつ閉店してしまったが、地方都市の変化と時の流れを象徴する出来事の一つとして、今でも思い出深い。現在の松江駅周辺は少し印象が変わっているかもしれないが、当時の駅前の記憶と、そこから温泉街へ向かう穏やかな道のりが重なって、どこか懐かしさを感じさせてくれる。

水の都に溶け込む温泉地 #

松江市を象徴する観光地といえば「松江城」である。現存12天守の一つであり、かつ国宝にも指定されている名城だが、筆者は訪問時、時間の都合で松江城に立ち寄ることができなかった。

もっとも、近年ではこの松江城の眺望に関しても変化が起きつつある。松江しんじ湖温泉周辺で進行中の高層マンション建設により、松江城からの景観に影響が出るのではないかという懸念が一部報道でも取り上げられている。今後、都市と文化遺産の共存がどう調整されていくかにも注目したい。

松江市は“水の都”と呼ばれるように、宍道湖や堀川といった水辺の風景に包まれた都市である。その延長線上にある松江しんじ湖温泉もまた、水と共にある暮らしの一部のような存在だ。温泉街としての賑わいは控えめながらも、松江城や堀川遊覧船といった周辺観光との相性も良く、観光の合間に立ち寄れる利便性も魅力的である。

宿泊すればより深くこの土地の魅力に浸れることは間違いないが、日帰りでも十分にその一端を味わえる。ホテルの設備も整っており、観光客だけでなく地元の人々にも利用されている様子がうかがえた。

松江しんじ湖温泉は、喧騒から離れ、静かな湖畔で過ごす贅沢な時間を提供してくれる温泉地である。宍道湖の眺望を背景に、松江という都市の風景と一体化したその穏やかな空間は、訪れる人にやさしい癒しを与えてくれる。