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松島の高台に佇む風格ある霊泉――湯の原温泉(宮城県松島町)

松島の高台に佇む風格ある霊泉――湯の原温泉(宮城県松島町)

·887 文字·2 分

観光地・松島の喧騒を逃れて
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日本三景の一つとして、知らない者はいない名勝・松島。五大堂や瑞巌寺を巡り、海沿いの華やかな活気に触れた後、私はあえて海岸線のホテル群を背に、山側の静かな一角へと足を向けた。

目的地は『湯の原温泉元湯 霊泉亭』。 「松島温泉」という華やかな呼び名よりも、「湯の原温泉」という古くからの名称がしっくりくる、知る人ぞ知る隠れ家のような元湯である。

風格ある木造建築と、貸し切りの静寂
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辿り着いたその場所には、期待通りの光景が待っていた。 歴史を積み重ねたことが一目でわかる、重厚な木造建築。宿泊も受け入れているというその建物は、観光地の喧騒から完全に隔絶された風格ある佇まいを見せていた。

暖簾をくぐり、浴場へ向かう。秋保の共同浴場でのあの不愉快な騒々しさが嘘のように、そこには静寂が満ちていた。運良く他の客の姿はなく、この歴史ある空間を私一人で独占することができた。秋保でささくれ立った心を癒やすには、これ以上ない「静」の環境であった。

独占の喜びと、かすかに残る「湯の真実」
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しかし、温泉ファンとしての冷徹な視点は、一つの事実を捉えていた。 風格ある浴室で一人湯に浸かる時間は至福であったが、残念なことに、お湯からは少しばかり消毒臭が鼻を突いたのである。

歴史ある元湯、そして素晴らしい木造建築。その器が見事であればあるほど、管理上の理由であろう塩素の香りが、源泉の個性を覆い隠してしまっていることが惜しまれてならなかった。作並で味わった「足元自噴」の生命力溢れる湯と比較すると、どうしても温泉そのものの鮮度という点では、物足りなさが残る結果となった。

総括:器を楽しむか、湯を楽しむか
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松島という超メジャー観光地にありながら、こうした静かな時を過ごせる場所があること自体、一つの発見であった。建物が放つ圧倒的な情緒と、独占できる静寂。それだけで、秋保での嫌な記憶を上書きするには十分な価値があったと言える。

たとえお湯の質に一抹の寂しさを感じたとしても、あの木造建築の階段を歩き、静寂の中で湯を浴びた記憶は、松島観光の単なる「おまけ」ではない、確かな旅の厚みとなった。

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