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和歌山県の茶褐色の名湯――鶴の湯温泉(和歌山県みなべ町)

和歌山県の茶褐色の名湯――鶴の湯温泉(和歌山県みなべ町)

·1259 文字·3 分

和歌山県みなべ町にある鶴の湯温泉(つるのゆおんせん)※を訪問し、日帰り温泉利用をしたのでその体験を記す。

※秘湯として有名な、乳頭温泉郷・鶴の湯温泉とは異なる。

私はよく、同じ和歌山の名湯・龍神温泉(りゅうじんおんせん)を訪問するが、京都・大阪方面から向かう場合、阪和自動車道のみなべICで車を降りる。そこから龍神へと続く国道424号線は、紀伊半島の山深さを感じさせる格好のドライブコースだ。

しかし、目的地へ急ぐ私の足を、決まって止めさせる場所がある。それが、みなべ町にひっそりと佇む一軒宿・鶴の湯温泉だ。これまでに二度、私は吸い寄せられるようにこの暖簾をくぐっている。

圧倒的な存在感を放つ、茶褐色の源泉
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鶴の湯温泉は、寄り道と呼ぶには、あまりに惜しい温泉である。泉質はナトリウム―炭酸水素塩泉で、色は茶褐色である。茶褐色というと、同じ和歌山県の花山温泉(はなやまおんせん)を彷彿とさせる。臭いは無臭だが、若干の鉄っぽさがある。

温泉分析表
温泉分析表別表

全国区の知名度を誇る龍神温泉の「日本三美人の湯」が清らかな透明感を持つならば、こちらは大地のエネルギーをそのまま凝縮したような力強さがある。肌に触れる湯の質感は素晴らしく、わざわざICを降りてまで立ち寄る価値を、その一浸かりで証明してくれる。

なお、鶴の湯温泉には内湯と露天風呂があるが、私は内湯のみ入浴している。というのも、内湯と露天風呂は入口も脱衣所も別になっており、移動するには着替え直す必要があるためだ。旅の途中での立ち寄りということもあり、時間を気にして内湯のみで済ましてしまう。

温泉大国・和歌山ゆえの不憫な立ち位置
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ここで、私として一つの持論を述べたい。この鶴の湯温泉は、あまりにも「不憫」な環境に置かれているのではないか、ということだ。

温泉宿としてのポテンシャルは極めて高い。しかし、いかんせん周囲のライバルが強すぎるのだ。国道424号線の先には龍神温泉が控え、また、みなべICから少し南に行けば白浜温泉(しらはまおんせん)が鎮座している。和歌山県で温泉宿に泊まる場合、どうしてもそのどちらかの温泉地を優先するのでは無いだろうか。

ここに泊まるだけの価値は大いにあると確信しつつも、結局は龍神や白浜に宿を取ってしまう。名湯を知る旅人だからこそ抱く、この贅沢で申し訳ないような葛藤がある。鶴の湯温泉は、そんな知る人ぞ知る一軒宿としての宿命を背負っているように思えてならない。

総括:素通りするには、あまりにも惜しい
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もしあなたが龍神温泉を目指して車を走らせているのなら、ぜひ一度、みなべの山中でハンドルを切ってみてほしい。そこには、大温泉郷の影に隠れながらも、静かに、そして力強く湧き続ける茶褐色の名湯が待っている。

宿泊せずとも、その湯に触れるだけで、紀伊半島の旅はより一層深いものになるはずだ。

なお、文中で紹介した龍神温泉と花山温泉の記事はこちらから。

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