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日本初の源泉掛け流し宣言の地——十津川温泉(奈良県十津川村)

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龍神温泉の帰り道に、立ち寄りで叶えた小さな夢 #

紀伊半島の奥地に位置する十津川温泉。筆者がこの地を初めて訪れたのは、龍神温泉に宿泊した帰り道のことだった。アクセスの悪さから、関東在住時には訪れる機会を得られずにいたが、今回は関西在住+自家用車という条件がそろったことで、念願の訪問が実現した。

宿泊は龍神温泉だったが、せっかくこの地まで来たのだからと、十津川温泉へと立ち寄った。これが想像以上に素晴らしい温泉体験だった。

十津川村には、十津川温泉・湯泉地(とうせんじ)温泉上湯温泉の三つの源泉地が点在しており、それぞれに異なる雰囲気と泉質の魅力がある。

これらすべてが日本初の源泉かけ流し宣言の地として知られ、村内の全温泉施設で加水・循環を行わない源泉かけ流しが徹底されている点は特筆に値する。泉質の鮮度と本物の湯にこだわる温泉ファンにとっては、この事実だけで十分に訪れる動機となるだろう。

源泉掛け流しの湯と、川を望む極上の立地 #

十津川温泉の日帰り温泉施設である『十津川温泉 庵の湯』は、泉質の良さはもちろんのこと、浴槽からダムや川を一望できる立地が最大の魅力だ。山と水に囲まれた静けさの中、湯に身を沈めながら、自然との一体感を味わえる。観光地化されすぎていない、程よい鄙びと静けさが心地よく、まさに温泉マニア憧れの地と呼ばれるにふさわしい空間だった。

庵の湯

十津川温泉には日帰り温泉施設が2つあり、1つは上述の庵の湯で、もう1つは『公衆浴場 憩の湯』だ。こちらは庵の湯と比べてしまうと、景色が残念ではあるが、泉質は同等に素晴らしい。どちらかというと、観光客向けというよりも、地元客向けの素朴な施設といった感じである。時間がある温泉ファンであれば、どちらも訪問しても良いが、観光客がどちらか1つしか訪問する時間が無いのであれば、庵の湯をおすすめする。ただし、憩の湯は、入口にスロープが設けられていたり、施設内の階段には自動昇降機が設置されてあったりと、バリアフリー対処がされていた。

憩の湯

温泉を持ち帰れる『源泉販売スタンド』 #

筆者は利用しなかったが、十津川温泉では、『源泉販売スタンド』という、温泉を持ち帰るサービスが提供されていた。10 Lで100円と有料だが、自宅で十津川の湯を楽しめるというのは、温泉地としての姿勢と自信を感じさせる。湯量が豊富な十津川温泉ならではのサービスだろう。自家用車で、かつ、比較的家が近い場合には、ポリタンクを準備して持ち帰るのも有りだ。

温泉スタンド

十津川温泉の空気感と、龍神温泉との違い #

十津川温泉の温泉街は、観光客で賑わうタイプの温泉地ではなく、非常に静かで落ち着いた雰囲気が漂う。龍神温泉と同様に山深い地にあるが、より「村」の気配が強く、地元の人々の暮らしと温泉が密接に結びついている印象を受けた。

アクセスについては、やはり紀伊半島の例に漏れず難易度は高めだ。ただし、事前にルートをきちんと選べば「酷道」は避けられる。慣れていない人には距離も長く感じられるだろうが、それでも行く価値は十分にある温泉地だ。

次は宿泊して、源泉掛け流しの力をじっくり味わいたい #

実は、筆者は過去に十津川村の別の温泉地・湯泉地温泉に宿泊したことがあるが、今回改めて十津川温泉にも泊まりたいという思いが強くなった。そしてその思いを実行に移し、2日後には十津川温泉の宿に予約済みである。

源泉掛け流しの質の高い湯を、朝昼晩とじっくり味わう。その体験は、また別記事で記録する予定だ。