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塩素の香りが苦い記憶に残る——こんぴら温泉(香川県琴平町)

初めての四国旅行。せっかくならと「温泉むすめ」でも知られるこんぴら温泉に泊まってみようと思った。香川県には金比羅山もうどんもあるし、温泉旅にはうってつけの土地だと期待していた。

だが、結果として、この旅の温泉体験は“強烈な塩素臭”と共に記憶に焼きつくものとなった。

温泉街に漂う、まさかの消毒臭 #

宿は温泉地らしい立地で、観光的にも利便性の高い場所だった。チェックイン後、さっそく浴衣に着替えて浴室へ向かった。そこまではワクワクしていた。

しかし、浴室に入った瞬間、鼻を突くキツい塩素の臭いが空気中に広がっていた。プールや公共浴場で感じるような消毒臭が、強烈に漂っていた。源泉掛け流しでないことは想定内だったが、“我慢して入るレベルの臭気”は完全に予想外だった。

湯船に浸かっても、塩素臭から逃れられなかった。湯上がり後もしばらく身体に臭いが染みつき、夕食を食べながらも頭痛を覚えるほどだった。これまで全国の温泉地を巡ってきたが、ここまで強烈な塩素臭を感じたのは初めてだった。

個別の問題ではなく、地域ぐるみの管理体制かもしれない #

一時的な消毒ミスかとも思ったが、夜に温泉街を歩いていて驚いた。排水溝から立ち上る臭いが、街全体に広がっていた。つまり、特定の宿だけでなく、温泉街全体が“塩素に依存した衛生管理”を行っている可能性が高いと感じた。

もちろん、塩素消毒そのものを否定するわけではない。安全のために必要なケースもあるし、他の温泉地でもそれは許容してきた。しかし、身体に臭いが残るレベル、頭痛を引き起こすレベルの消毒臭は異常であり、何らかの管理ミスが常態化している可能性もあると感じた。

温泉目的で訪れる人には、強くおすすめしない #

正直、温泉目当てでこんぴら温泉を訪れることは、全くおすすめできない。観光やうどん目当てで、ついでに泊まるというのであれば構わないが、「良質な湯を楽しみたい」「温泉に癒されたい」という目的では絶対に満足できないと思う。

唯一、再訪の可能性があるとすれば、それは「本当にあの日だけが異常だったのか」を確認するための検証としてである。それも、普通の旅行者ではなく、温泉を専門的に追いかけるマニアの目線からの話である。

温泉に対してどこまで期待し、どこまで妥協できるかという分岐点に立たされるような、ある意味では忘れられない体験だった。

ただし、金比羅山への参拝やうどん巡りが主目的であり、温泉に高い期待を寄せていないのであれば、立地や利便性の面から、体力回復を兼ねた宿泊地として選ぶのは合理的かもしれない。