龍神の名の通り、至る所に宿る「龍」の気配 #
大阪から高速を降り、道幅の狭い「酷道」を慎重に抜けて辿り着いた龍神温泉(りゅうじんおんせん)。日本三美人の湯としても知られる龍神温泉を、筆者はかなり気に入っている。龍神温泉の中でも、『季楽里龍神』(きらりりゅうじん)という温泉宿には3回も宿泊している。本記事では体感したその魅力を記す。
なお、龍神温泉全体の体感については、以下記事に記してある。
肌にまとわりつく、唯一無二の「とろとろ」 #
龍神温泉を語る上で、その圧倒的な泉質を抜きにはできない。ナトリウム炭酸水素塩泉の湯は、浸かった瞬間に肌を優しく包み込むような、独特の「とろみ」がある。まさに「日本三美人の湯」という称号を裏切らない質感だ。
内湯の落ち着いた空間も良いが、露天風呂から清流と山々の景色を眺めていると、日常の喧騒が遠のいていくのを感じる。東北の静かな温泉地を好んでいた私だが、この紀伊半島の深い山々に抱かれる静寂には、それらと共通する、あるいはそれ以上の深い安らぎがある。この「とろとろ」の雫に身を浸すためだけにでも、わざわざ足を運ぶ価値がある。
落ち着きと清潔感。二度訪れても変わらぬ安心感 #
客室は、余計な虚飾を排した清潔感あふれる純和風の設えだ。畳の香りに包まれ、窓際の広縁で外を眺めていると、長旅の疲れが静かに解けていく。
二度の宿泊で、部屋のタイプに大きな変化はなかったが、それがかえって「いつもの落ち着ける場所」に帰ってきたような安心感を与えてくれる。

「気楽」という贅沢。リピートの決め手は高品質なバイキング #
私がこの宿を1年で2度もリピートした最大の理由は、その「自由さ」にある。 温泉宿といえばコース料理が一般的だが、時間が厳格に決まっていたり、メニューの順番に縛られたりすることに、どこか堅苦しさを感じることはないだろうか。せっかく心を休めに来たのだから、食事も自分のペースで楽しみたい。
『季楽里龍神』の夕食・朝食は、そんな私の好みにぴったりのバイキング形式だ。特筆すべきは、その「質」である。安価なバイキング宿にありがちな「種類は多いが味は微妙」というがっかり感とは無縁だ。
- 夕食の愉しみ: 艶やかな刺身、滋味深い混ぜご飯、そして川魚などの肉・魚料理がずらりと並ぶ。一皿に少しずつ、多種多様な味覚を盛り付ける喜びがある。

- 朝食の多幸感: スクランブルエッグや卵焼き、ソーセージといった定番から、焼鮭、納豆、そして欠かせない温泉たまごまで。和食中心の充実したラインナップが、朝から食欲をそそる。

自分の好きなものを、好きなだけ。それでいて一品一品がしっかりと美味しい。この気楽さこそが、現代の旅人にとっての真の贅沢かもしれない。
総括:「酷道」を越えてでも、あの湯へ #
土砂崩れによる通行止めといったアクシデントに見舞われることもある紀伊半島の旅だが、それすらもこの名湯へ辿り着くためのスパイスに思えてくる。
豪華なコース料理の緊張感から解き放たれ、広々としたロビーととろとろの湯、そして美味しいバイキングに身を任せる。そんな「気楽で上質な旅」を求める人に、龍神温泉は最高の答えを返してくれるはずだ。次は紅葉か、あるいは雪の季節か。あの木彫りの龍に再会する日が、今から待ち遠しい。
余談:12月の館内にて #
最後に、12月に訪れた際の館内の様子を少しだけ。ロビーには大きなクリスマスツリーが飾られており、その横ではサンタ帽子を被った「温泉むすめ」の龍神晴が出迎えてくれた。

館内の一角には全国各地のファンから寄せられたグッズが並ぶ「奉納コーナー」もあり、この温泉地が多様な層から愛されていることが伝わってくる。こうした現代的なコンテンツもまた、歴史ある温泉地の新しい彩りとして静かに溶け込んでいた。

