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河原を掘ると温泉が湧く——川湯温泉(和歌山県田辺市)

河原を掘ると温泉が湧く——川湯温泉(和歌山県田辺市)

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和歌山県田辺市にある川湯温泉(かわゆおんせん)は、冬の風物詩である『仙人風呂』の存在で知られる温泉地だ。

仙人風呂とは、大塔川の川底から湧き出す熱い源泉と清流を混ぜ合わせ、広大な河原をせき止めて作られる巨大な露天風呂のこと。一度に千人が入れるほど大きいことからその名が付いたといわれ、毎年12月から翌2月にかけての期間限定で開放される。

私は今回、龍神温泉に一泊した翌日、十津川温泉へと向かう帰路の途中に、この川湯温泉へ立ち寄った。残念ながら訪問したのは6月であり、仙人風呂には入れなかったが、仙人風呂の目の前に位置する、昔ながらの共同浴場『川湯温泉 公衆浴場』に入浴した。

なお、同じ和歌山県田辺市にある龍神温泉(りゅうじんおんせん)の訪問記事はこちらから。

昔ながらの銭湯のような温泉施設
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川湯温泉 公衆浴場

建物の外観はかなり薄汚れてしまっていたが、入口は赤提灯が飾られていたり、植木鉢や水槽が飾られていたりと、下町の民家を髣髴とさせられた。受付にいたのは老夫婦で、入浴料はわずか300円。脱衣所やロッカーなども必要最低限といった印象で、観光客向けに過度に整備されたものではない。そこがまた良い。

泉質はアルカリ性単純泉であり、色は無色透明である。源泉が熱いためか加水はしているが、消毒無し循環無し加温無し入浴剤無しの、源泉掛け流しである。この泉質で300円で入浴出来るのは、破格だろう。

温泉注意書き

浴室はコンパクトで、湯船は数人入ればいっぱいになる程度の広さである。特徴すべきところは、温度は激熱だったことである。上記の注意書きを見ると浴槽温度は42℃と書かれているが、入浴した日はおそらく43~44℃くらいあったのはないか。実際、脱衣所に入った途端、地元の常連客と思われるお爺さんから、「今日の湯は熱いよぉ~」と声を掛けられた。

実際に入ってみると、掛け湯をした時点で感じる熱さ。私の先には、父親と子供が既に入浴していたのだが、あまりの熱さに、湯船に入ることを諦め、父子は何度も掛け湯をして過ごしていた。

私は足先から徐々に慣らしていき、何分か掛けてようやく身体全体を湯船に沈めることが出来た。途中、大学生と思わしき4~5人の集団が入ってきて、やはり熱さに身もだえ、「熱くて入れねぇ!」とはしゃいでいるのが少し微笑ましかった。

なお、やはり熱いためか湯上り後は少々のぼせ気味になったのと、浴室内にはシャワーがあるが、お湯が出なかったので注意を要する。

河原と一体化した風景
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この浴場の最大の特徴は、仙人風呂で知られる河原が、目の前に広がっていることだろう。脱衣所を出て少し歩けば、すぐに川の流れと、その河原に湧く温泉が見えてくる。訪問時には、水着を準備して川底を掘って作られたマイ露天風呂を楽しむ外国人観光客の姿が目に入った。まるで海外の温泉リゾートのような不思議な風景だった。

私自身は水着の用意がなかったため入浴はしなかったが、いつかは仙人風呂にも入りたいという思いを強くした。

仙人風呂

(2026年2月追記)

2月に訪問したら、ちょうど仙人風呂が営業していた。その際は水着を持っていなかったので残念ながら入浴が出来なかった。

温泉街というより湯治場の風情
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川湯温泉は、草津温泉や有馬温泉のような、大規模な観光温泉地では無い。むしろ、紀伊半島の山奥ということもあり、こぢんまりとした温泉地である。散策して回るほどの広さはなく、どこか湯治場的な、静けさを湛えた空間である。

喫茶こぶち

川湯温泉では数店舗だけ飲食店が営業している。私が訪問したのは『喫茶こぶち』という喫茶店である。飲み物だけでは無く食事も提供している。私は山菜うどん定食という、山菜うどんと、和歌山県名物であるめはり寿司のセットを頂いた。寿司という名前が付いているが、中身は高菜でおにぎりを包んだ郷土料理である。塩の利いためはり寿司は美味しかった。

山菜うどん定食

魅力は静けさと景観
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川湯温泉の魅力は何かと問われれば、やはり、河原と温泉が一体になっている景観、そして素朴で静かな雰囲気だと答えたい。観光地としての賑わいは控えめだが、川のせせらぎと温泉の湯けむりが共存する風景は、なにものにも代えがたい価値がある。

あえて派手さを求めず、素のままの温泉を楽しむ、そんな旅のひとときに、川湯温泉はぴったりの場所だ。

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