山梨県笛吹市にある石和温泉(いさわおんせん)。私はこの地を何度も訪れており、日帰りも宿泊も含めて複数の施設を体験している。温泉そのものの魅力はもちろんだが、ワインや郷土料理といった観光資源の豊かさも相まって、毎回異なる表情を見せてくれる。
なお、石和温泉の一番の特徴は、温泉とワインが楽しめることだが、同様に新潟県の越後湯沢温泉(えちごゆざわおんせん)でも、温泉と日本酒が楽しめる。駅構内に試飲があるのも同じである。温泉と酒が好きな方にはお勧めである。
2つの温泉施設 #
源泉掛け流し『旅館 深雪温泉』 #

石和温泉内の温泉施設の中で、最も強く記憶に残っているのが『旅館 深雪温泉』だ。最初は日帰りで利用し、湯の素晴らしさに圧倒され、その後改めて宿泊した。
驚くべきは、毎分1,415リットルという圧倒的な湯量を誇る自家源泉の鮮度である。湯船から豪快に溢れ出るオーバーフローはもちろん、シャワーまで惜しみなく本物の源泉が完全掛け流しされている。泉質が特異というより、とにかく新鮮で清潔な湯をしみじみと堪能できるのが魅力だ。石和温泉で極上の源泉掛け流しを求めるなら、まずここを訪問してほしい。
客室の雰囲気や、素泊まりの際に重宝する徒歩圏内の食事処など、より詳しい滞在情報は以下の個別レビュー記事にまとめている。
日帰り温泉施設『石和温泉 公衆浴場』 #

石和温泉公衆浴場は、富士山のペンキ絵が残る昭和レトロな雰囲気の公衆浴場である。単純温泉の自噴湯を430円で楽しめるほか、内湯に加えてサウナ、水風呂、電気風呂を備えており、昔ながらの銭湯文化を感じられる施設だ。
館内には食堂が併設されており、湯上がりに昔ながらの中華そばを味わえるのも魅力である。JR石和温泉駅から徒歩約10分とアクセスしやすく、15:00~23:00まで営業しているため、温泉街散策の締めくくりや夕食後の入浴にも利用しやすい。
より詳しい施設情報や浴場の雰囲気、館内食堂については、以下のレビュー記事で紹介している。
ワイン工場で学び、酔い、買い込む #
石和温泉を訪れると、街全体が“ワイン文化”に包まれていることに気づく。実はJR石和温泉駅には、有料でワインを試飲できる専用施設『駅中ワインサーバー』がある。これは観光としてワインを明確に打ち出そうという、鉄道会社としても意図的な取り組みの表れである。
ワインの試飲施設といえば、越後湯沢温泉駅の『ぽんしゅ館』を思い出す方も多いだろう。あの日本酒の自販機試飲体験は観光と駅の融合として非常に成功した例で、石和温泉駅の試みは、まさにその発展形ともいえる。
駅で列車を待つ間に地元ワインを試せるという体験は、単なる移動拠点を超えた“滞在価値”を与えてくれる。駅そのものが観光スポットとなることで、旅の記憶にも残りやすい。
石和温泉の観光的魅力として、私は何よりワインを推したい。温泉街の周囲には複数のワイナリーが点在し、その多くで工場見学と試飲が可能だ。
私が訪れたのは『モンデ酒造』。製法を学びながら、しっかりと試飲。気に入ったワインを何本も購入し、バッグがずっしり重くなったのを覚えている。他にも見学可能な酒造がいくつもあり、ワイナリー巡りだけでも一日が潰れるほどの充実度がある。
郷土料理・ほうとうが刺さる #
石和温泉を語るうえで、山梨の郷土料理「ほうとう」は外せない。私が訪れるたびに必ず立ち寄っているのが、『甲州ほうとう小作 石和駅前通り店』だ。店内は常に賑わっており、おそらく地域でも指折りの人気店だろう。

なかでも「豚肉ほうとう」は絶品である。私は全国あちこちを旅しているが、ここのほうとうは郷土料理の中でも特に好物のひとつだ。普段、食べ物のお土産を買うことは滅多にない私が、このほうとうだけは土産として買って帰った。それほどまでに、心と胃袋をつかまれた一品である。

石和温泉内では、ほうとうの伝統的なスタイルを大切にしながらも、最近では「ラーメンほうとう」などの新しいアレンジメニューにも力を入れている。私はまだ食したことはないが、次回訪問時にはぜひ試してみたいと思っている。どのような形であれ、郷土料理が時代と共に進化し続けていることは、訪れる楽しみの一つでもある。
宿泊は健康ランドも可能 #
石和温泉の宿泊については、上述の源泉掛け流しの深雪温泉がおすすめだが、温泉は日帰り利用で十分で、宿泊は温泉宿では無くても良い場合、健康ランドも選択肢に上がる。石和温泉は健康ランドがいくつかあり、私も『クア・アンド・ホテル 石和健康ランド』に宿泊したことがある。
ここは温泉こそ名乗っておらず、銭湯ではあるが、深夜営業の呑み処や広々とした浴場、そして宿泊施設を兼ね備えた、まさに“遊べる拠点”である。仕事終わりに東京から電車で向かい、ここで一息ついた経験がある。

遅い時間にチェックインし、湯に浸かり、そのまま施設内の居酒屋で一杯。翌日は近隣の本格温泉にハシゴする。健康ランドといえど、石和温泉観光のスタート地点としては非常に優秀だった。
アクセスの良さと観光地としてのポテンシャル #
石和温泉の重要な特徴として、アクセスの良さも挙げられる。新宿駅から特急で約90分という近さは、首都圏からの観光客にとって非常にありがたい。宿泊はもちろん、日帰り旅行としても十分に成立する距離感だ。
実際、私はこれまでに何度も日帰りで訪れている。正直に言えば、温泉マニアとなるまでは石和温泉の存在を知らなかった。それほど一般的な知名度は高くないのかもしれない。しかしながら、温泉・ワイン・郷土料理(ほうとう)・アクセスの良さと、四拍子が揃っているこの地は、観光地としてのポテンシャルが非常に高いと感じている。
石和温泉は、ただの温泉街ではない。湯に癒され、ワインに酔い、ほうとうで満たされる──そんな多面的な楽しみが重なり合う場所だ。何度でも訪れたくなるその理由は、単に湯があるからではなく、そこで過ごす時間そのものが濃密だからである。
新宿への帰りには塩山温泉に寄り道も #
なお、石和温泉へ、新宿からJR中央本線でアクセスした場合、新宿への帰りに途中のJR塩山駅で降りると、塩山温泉(えんざんおんせん)という温泉にも訪問することができる。私も塩山温泉を訪問しており、以下リンク先にその体験を記してある。