岐阜県岐阜市にある長良川温泉(ながらがわおんせん)を訪問した。今回、日帰り入浴で利用したのは、川沿いに位置する『ホテルパーク』である。ここは、温泉マニアにとっても特筆すべき視覚的特徴を持った湯を楽しめる場所だ。
なお、同じ岐阜県にある下呂温泉(げろおんせん)や平湯温泉(ひらゆおんせん)も訪問しており、訪問記事はこちらから。
有色泉がもたらす非日常感と成分の分析 #
温泉を巡る上で、湧き出した瞬間の鮮度を重視するならば、無色透明な湯が理想的であることは言うまでもない。空気に触れて酸化が進むことで色がつく有色泉は、科学的な鮮度という点では一歩譲る場合が多い。しかし、それでもなお、有色の温泉には抗いがたい非日常感がある。
長良川温泉の泉質は単純鉄冷鉱泉で、色は赤褐色の濁り湯である。色は非常に濃く、水面下10 cmほどで、自分の手が見えなくなるほどだった。同じような赤褐色の温泉というと、和歌山県の花山温泉、島根県の温泉津温泉、兵庫県の有馬温泉を彷彿とさせる。
鉄を含んだ温泉であるが、意外にも鉄の臭いはしなかった。これは、逆に鉄を含んでいないが鉄の臭いがした温泉津温泉と真逆である。
析出物のない管理された湯船 #
ここで興味深かったのは、湯の性質と浴槽のコンディションの対比である。花山温泉や温泉津温泉のような濃厚な赤褐色泉では、湯船の縁や床に千枚田のような析出物がゴテゴテと堆積するのが常だ。その荒々しさこそが成分の濃さの証明のようにも扱われる。
しかし、ここホテルパークの浴槽では、湯は同等の濃さを保ちながらも、不自然な堆積物は見当たらなかった。これは成分構成の微細な違いによるものか、あるいは施設側の清掃頻度が極めて高いことによるものだろう。堆積物による「鍾乳洞」のような趣はないが、非常に端正に保たれた湯船には、観光地の宿としての矜持と、濁り湯でありながら清潔感を維持する管理体制の高さがうかがえた。
古民家カフェでの食事 #

長良川温泉の散策後、小腹が空いたため、『Cafe 茶人』という喫茶店に入った。時間は15時くらいで、長良川温泉の飲食店はこの時間帯は開いていないところが殆どだった。運良く開いていたのが『Cafe 茶人』であった。

外観は古民家で、中に入るとお洒落に改装してあった。昼時を過ぎていたため、他に客は見当たらず、落ち着いた時間を過ごすことが出来た。『Cafe 茶人』は喫茶店でありながら、蕎麦や丼など、本格的な食事も出来る。私はざる蕎麦を頂いた。

今回の訪問では蕎麦を頂いたので、コーヒーは食後に合わないかなと思い注文しなかったが、この喫茶店では戦国武将の名が付けられた各種コーヒーがある様子だった。
鵜飼の伝統と茨城県日立市の繋がり #
展望露天風呂から長良川の穏やかな流れを眺めていると、自ずとこの地の象徴である鵜飼の光景が意識される。この地を訪れるまで、長良川が鵜飼の地としてこれほど有名であることを深く認識してはいなかったが、現地でその歴史に触れる中で一つの発見があった。
長良川の伝統を支える鵜たちは、実は茨城県日立市の鵜の岬で捕獲されているという事実だ。
私は日立市には縁があり、その地で鵜の捕獲が行われていることも以前から知っていた。遠く離れた茨城の海岸線と岐阜の清流が鵜という存在で一本の線に繋がった事実は、非常に興味深い。
知識として持っていた茨城の光景と、目の前の長良川の景色が重なり合う。こうした予期せぬ情報の合致は、各地を巡る温泉地踏破の旅において、お湯の質を確認することと同じくらい意義深い体験であった。