岐阜県の名山・金華山の麓、清流・長良川のほとりに湧く長良川温泉。今回、日帰り入浴で利用したのは、川沿いに位置する『ホテルパーク』である。ここは、温泉マニアにとっても特筆すべき視覚的特徴を持った湯を楽しめる場所だ。
有色泉がもたらす非日常感と成分の分析 #
温泉を巡る上で、湧き出した瞬間の「鮮度」を重視するならば、無色透明な湯が理想的であることは言うまでもない。空気に触れて酸化が進むことで色がつく有色泉は、科学的な鮮度という点では一歩譲る場合が多い。しかし、それでもなお、有色の温泉には抗いがたい非日常感がある。
ホテルパークで出会った長良川温泉の最大の特徴は、鉄分を豊富に含んだ赤褐色の濁り湯だ。手ですくえば鉄錆の匂いが立ち込め、視覚的にも「特別な温泉に来た」という実感を強く与えてくれる。これまで、同様の赤褐色系では和歌山の花山温泉、島根の温泉津温泉、あるいは有馬温泉の金泉といった名だたる強豪を経験してきたが、長良川の湯もそれらに引けを取らない力強さを備えていた。
析出物のない管理された湯船 #
ここで興味深かったのは、湯の性質と浴槽のコンディションの対比である。花山温泉や温泉津温泉のような濃厚な赤褐色泉では、湯船の縁や床に千枚田のような析出物がゴテゴテと堆積するのが常だ。その荒々しさこそが成分の濃さの証明のようにも扱われる。
しかし、ここホテルパークの浴槽では、湯は同等の濃さを保ちながらも、不自然な堆積物は見当たらなかった。これは成分構成の微細な違いによるものか、あるいは施設側の清掃頻度が極めて高いことによるものだろう。堆積物による「鍾乳洞」のような趣はないが、非常に端正に保たれた湯船には、観光地の宿としての矜持と、濁り湯でありながら清潔感を維持する管理体制の高さがうかがえた。
鵜飼の伝統と茨城県日立市の繋がり #
展望露天風呂から長良川の穏やかな流れを眺めていると、自ずとこの地の象徴である「鵜飼」の光景が意識される。この地を訪れるまで、長良川が鵜飼の地としてこれほど有名であることを深く認識してはいなかったが、現地でその歴史に触れる中で一つの発見があった。
長良川の伝統を支える「鵜」たちは、実は茨城県日立市の「鵜の岬」で捕獲されているという事実だ。
私は日立市には縁があり、その地で鵜の捕獲が行われていることも以前から知っていた。遠く離れた茨城の海岸線と岐阜の清流が「鵜」という存在で一本の線に繋がった事実は、非常に興味深い。
知識として持っていた茨城の光景と、目の前の長良川の景色が重なり合う。こうした予期せぬ情報の合致は、各地を巡る温泉地踏破の旅において、お湯の質を確認することと同じくらい意義深い体験であった。