自家用車を走らせ、知多半島の海岸線沿いを進む。左手に広がる穏やかな海を眺めながらのドライブは、それ自体が旅の目的となるほどに心地よい。目的地は、知多半島の先端にほど近い南知多温泉(みなみちたおんせん)。今回は日帰り温泉施設『うめ乃湯』を訪れた。
西海岸の潮風を浴びる絶好のドライブコース #
南知多へのアクセスは、自家用車が最もその魅力を引き出してくれる。知多半島の西海岸側、常滑を抜け、海沿いの国道を南下していくルートは格別だ。
窓を開ければ、伊勢湾から吹き込む潮風が車内に流れ込む。海岸線に沿って緩やかに続くカーブを曲がるたびに、キラキラと輝く海面が視界に飛び込んでくる。この西海岸側のルートは、遮るもののない海の広がりを感じられるのが最大の魅力だ。ただ目的地に向かうための移動ではなく、風景と一体化するような心地よい疾走感は、南知多という場所への期待を自ずと高めてくれる。
一面ガラス張りの内湯から望む伊勢湾 #
今回日帰り入浴で利用したのは、このエリアの象徴的な存在である「まるは食堂」に併設された「うめ乃湯」である。
浴室に入ると、まず目を奪われるのがその眺望だ。内湯のみの構造ではあるが、不満を感じることは全くない。なぜなら、海側の壁が一面大きなガラス張りになっており、極めて開放的な造りになっているからだ。
湯船に浸かると、目線の高さで伊勢湾の水平線がどこまでも続いている。窓が大きいため、室内でありながら海との一体感は凄まじい。10人ほどは入れるであろう浴槽は、観光地ゆえに常に多くの人で賑わっていた。次から次へと入れ替わり立ち代わり訪れる観光客の姿に、ゆっくりと静寂を楽しむというよりは、ややせかせかとした入浴にはなったが、それを差し引いてもこの「一面ガラス越しの海」は絶景と呼ぶにふさわしい。
強塩泉の温熱効果 #
温泉マニアとしての関心は、やはりその泉質にある。南知多温泉の泉質は、ナトリウム・カルシウムー塩化物強塩泉。海沿いの温泉によく見られるこのタイプを、私は「要は塩水に近い」と捉えている。
この「塩水に近い」という性質こそが、温泉としての強力な個性を生んでいる。塩分濃度が高いため、湯に浸かると浸透圧の関係か、身体の芯まで熱が浸透してくる感覚が非常に速い。短時間の入浴であっても、身体の内側からポカポカと熱が込み上げてくる。
塩分が肌の表面を薄くコーティングし、汗の蒸発を抑えるため、湯上がり後も熱が逃げにくいのも特徴だ。せかせかとした入浴環境であったとしても、お湯自体の温める力(温熱効果)は確かなものであり、強塩泉ならではの「ガツン」とした手応えを存分に味わうことができた。
混雑の「まるは食堂」と、賢い選択「回転まるは」 #
入浴後の楽しみは、言うまでもなく南知多の海鮮である。しかし、併設された「まるは食堂」の人気ぶりは、想像を絶するものがあった。
あまりの観光客の多さに、食事処には長蛇の列ができている。整理券を取って待とうと試みたものの、表示された待ち時間のあまりの長さに断念せざるを得ないほどだった。これほどの集客力は、ある種この地のパワースポット的な熱量すら感じさせる。
そこで目をつけたのが、同じ施設内にある「回転まるは」である。こちらは「まるは食堂」本館の凄まじい混雑に比べれば、比較的スムーズに、それほど待たずに席に着くことができた。これが正解だった。
提供される寿司は、回転寿司の枠を越えた鮮度を誇っていた。地物と思われる新鮮なネタを口に運ぶと、南知多まで車を走らせてきた甲斐があったと確信できる。行列を回避しつつ、この地で最も期待していた「絶品の海鮮」に辿り着けた満足感は、旅の後半を非常に豊かなものにしてくれた。
旅の総括:五感で味わう海の恵み #
南知多温泉への旅は、西海岸の爽快なドライブに始まり、強塩泉の確かな温もり、そして鮮やかな寿司で締めくくられた。
「うめ乃湯」の大きなガラス窓越しに見た、あの穏やかな伊勢湾の青さは今も鮮明に記憶に残っている。観光地特有の喧騒や混雑さえも、この圧倒的な海景と、身体を芯から温める「塩の湯」の説得力の前では、旅の活気として受け入れることができた。
ドライブ、温泉、海鮮。知多半島のポテンシャルをストレートに体感した、納得の「踏破」の記録である。