兵庫県豊岡市にあり、関西を代表する温泉地の一つ、城崎温泉(きのさきおんせん)を訪問した。城崎温泉には有名な外湯が数多くあるが、そのうち『鴻の湯』を訪れ、日帰りで温泉街の魅力を存分に味わったので、その体験を記す。
なお、兵庫県には他にも、全国的に有名な有馬温泉(ありまおんせん)や、98℃の高温源泉から湯気が立ち込める湯村温泉(ゆむらおんせん)などがある。私も訪問済みであり、その記事はこちらから。
内湯発祥の地 #
温泉ファンには周知のことかと思うが、ここで内湯・外湯の意味を念のためおさらいする。旅館内にある浴場のことを内湯と言い、街の中にある公共浴場のことを外湯と言う。現在は旅館に内湯があるのは当たり前となっているが、かつては温泉地というと外湯(共同浴場)しか無く、旅館に泊まって外湯に行くスタイルしか無かったのだ。
城崎温泉が「内湯発祥の地」とも言われるのは、1920年代に、三木屋という旅館が独自に掘り当てた温泉を、旅館専属の温泉(内湯)としたことが由来である。なお、当時は温泉は公共のもので共同で所有するという認識が根強く、「温泉を専属で所有するのはけしからん!」と批判され、訴訟にもなっている(後に和解)。内湯が当たり前の今では、自分が掘り当てた温泉を自分のものにするのは当たり前だろう、と思ってしまうので、時代による認識というのは興味深い。
なお三木屋という旅館は、創業300年で現在も存在し、『城の崎にて』を執筆した志賀直哉も泊まった老舗旅館である。建物は国の有形文化財に登録されている。
外湯『鴻の湯』訪問記 #
城崎温泉は外湯巡りが活発であり、外湯はなんと7湯もある。そのうち、私が訪れたのは『鴻の湯』(こうのゆ)である。ここは城崎温泉にある外湯の中でも最も古くからある温泉であり、なんと開湯は1400年前に遡る。コウノトリが足の傷をいやした伝説があり、そこから鴻の湯という名が付いたのだという。
鴻の湯の泉質はナトリウム・カルシウム-塩化物泉で、色は無色透明である。非常に温まりやすい泉質で、よく汗をかく。湯上り後には、瓶入りコーヒー牛乳を飲んだ。こうした、温泉・銭湯ならではの瓶牛乳を飲めるのが、温泉情緒をさらに高めてくれる。

圧巻の温泉街風景 #
城崎温泉の真骨頂は、やはりその街並みにある。柳の木が揺れる川沿いの道に、和風建築の建物が立ち並び、浴衣姿の観光客がそぞろ歩く。JR城崎温泉駅を降りた瞬間から、まさに温泉街に来たという感覚に包まれる。

そして何より圧巻なのは、そのスケールだ。川沿いに立ち並ぶお土産屋や飲食店は、数百メートル、時には1 km以上に渡って続く。温泉街としての経済規模の大きさ、観光地としての完成度の高さには思わず唸らされた。
観光地価格と日帰り利用 #
城崎温泉は日本海まで5 kmほどという立地にあり、海産物、特にカニが有名である。カニ料理を私も堪能したかったが、観光地価格で、中々気軽に手を出せない価格であった。
一方、ランチタイムであったので、『大幸商店』で海鮮ユッケ丼を堪能した。こちらは2,000円ほどで、観光地としてはリーズナブルな価格であり、充分に海産物を堪能することが出来た。

ただしやはり、人気の観光地でお昼時ということもあり、店内は非常に混んでいたので、食事の時間は気を付けた方が良いかもしれない。
城崎温泉の立ち位置 #
城崎温泉はまさに温泉街の王道であり、関西屈指の温泉地だ。ただし、同じ兵庫県には有馬温泉という強力なライバルが存在する。神戸からのアクセスが良く、日本三古湯の一つとして名高い有馬温泉の存在は大きい。
一方で、城崎温泉も歴史ある温泉地であり、志賀直哉の小説『城の崎にて』にも登場するなど文化的な深みもある。他県にあれば県内随一の温泉街として名を馳せていたであろう実力を持つ。アクセスの面でやや不利ではあるが、それを補って余りある街並みの美しさと雰囲気が、観光客を惹きつけてやまない。
城崎温泉は、まさに温泉街に行くことそのものを楽しむ場所だ。日帰りであってもその魅力は充分に伝わってくるが、次回はぜひ、浴衣を着てそぞろ歩きながら、宿泊込みでその世界観に浸ってみたい。