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大阪市街から離れた静かな県境の湯——犬鳴山温泉(大阪府泉佐野市)

大阪府の温泉地──と聞いてすぐに思い浮かぶ人は少ないかもしれない。筆者も47都道府県温泉地制覇を目指す中で、「大阪の温泉ってどこだろう?」と考え、犬鳴山温泉を訪れることにした。

きっかけは温泉むすめ。そして地理的な達成感。

訪問したのは『み奈美亭』と『不動口館』 #

犬鳴山温泉では、2つの旅館で日帰り温泉を体験した。ひとつは『み奈美亭』、もうひとつは『不動口館』である。

両者を比較すると、おすすめは圧倒的に『不動口館』だ。山間に建つその立地は、自然との一体感が心地よく、窓の外には清流と緑の景色が広がる。泉質も良好で、湯に浸かりながら感じる肌触りのなめらかさは印象的だった。露天風呂からは川を見下ろすことができ、余計な人工物が視界に入らないため、自然の中での入浴感が楽しめる。浴槽の作りも高級感があり、全体的に完成度が高い。

さらに、温泉むすめファンにとって嬉しいのは、館内に等身大パネルやグッズが設置されている点。ファン向けの配慮がしっかりされており、訪れる楽しさが倍増する。

一方の『み奈美亭』も悪くはない。設備や雰囲気に不満はなく、通常の温泉宿としては十分なクオリティがある。ただし、泉質には若干の消毒臭があり、温泉の源泉感を求めるとやや物足りない印象を受ける。また、露天風呂の眺望も『不動口館』に比べると劣っており、川を眺めるには衝立越しで、崖に落ちたゴミのようなものが視界に入りやすく、展望としてはやや残念だった。

大阪府といっても、ほぼ和歌山 #

犬鳴山温泉は地理的には大阪府泉佐野市にあるが、実際に訪れてみるとその立地はほとんど和歌山県との県境。雰囲気も大阪市街の延長ではなく、むしろ和歌山の山間部に近い静けさと自然に包まれている。

公共交通機関でのアクセスはやや不便で、車が無いと訪れるにはやや敷居が高い。だが、逆に言えばその不便さが静かな環境を守っているともいえる。

温泉地としての価値は十分 #

大阪の温泉というだけで期待値が下がってしまう人もいるかもしれないが、犬鳴山温泉はその予想を良い意味で裏切ってくれる。特に『不動口館』は、景観・泉質・ファンサービスが揃った穴場的存在。

温泉むすめの存在によって注目される機会が増えている今こそ、正当に評価されるべき温泉地だと感じた。大阪府の温泉という“枠”にとらわれず、ひとつの魅力ある山間温泉地として、ぜひ訪れてほしい場所である。