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雪深き奥飛騨温泉郷で出会った濁り湯——平湯温泉(岐阜県高山市)

雪深き奥飛騨温泉郷で出会った濁り湯——平湯温泉(岐阜県高山市)

·1026 文字·3 分

奥飛騨温泉郷の玄関口に位置する平湯温泉(ひらゆおんせん)。この地を訪れたのは、辺り一面が深い雪に覆われた冬の盛りであった。今回の目的は、平湯民俗館の敷地内にひっそりと佇む『平湯の湯』の訪問である。

圧倒的な雪景色と『平湯の湯』の佇まい
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積雪

駐車場に車を止め、民俗館の敷地へ足を踏み入れると、まずその積雪量に圧倒された。立ち並ぶ古民家の茅葺き屋根には、驚くほど大量の雪がうずたかく積もっており、山の冬の厳しさを物語っていた。

平湯の湯は、この民俗館に併設された野趣あふれる露天風呂である。入浴料は特定の金額が定められているわけではなく、入り口に置かれた募金箱に「寸志」を投入する形式をとっている。地域の方々の善意によって維持されている、古き良き湯治場の風情がそこにはあった。

厳しい冬の道中と熱き緑濁の湯
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雪の時期の訪問は、その美しさと同時に厳しさも伴う。凍結した階段は滑りやすく、手すりなどの設備がさらに充実すれば、より安全にこの名湯を楽しめるだろうと感じるほどに、足元には注意が必要であった。

しかし、その苦労の先に待っていた湯船は格別だった。満たされていたのは、美しい「緑がかった濁り湯」である。雪道で冷え切った身体を沈めると、お湯は非常に熱く、肌にピリピリと沁み渡るような力強い熱感があった。

周囲を見渡せば、浴槽はスキー帰りと思われる客でひっきりなしに埋まっており、活気に満ちていた。白い雪と緑の濁り湯の鮮やかなコントラストを眺めながら、スキー客のいない夏場は一体どのような静けさになるのだろうかと思いを馳せるひと時は、冬の平湯ならではの贅沢な体験であった。

平湯の食を彩る古民家の蕎麦と夜の灯火
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温泉を堪能した後は、近隣の食事処へと足を運んだ。

まず訪れたのは『山菜喰い処 よし本』である。店内は古民家を改装した内装で、囲炉裏などがある落ち着いた雰囲気が素晴らしい。奥飛騨の澄んだ空気の中でいただく蕎麦は、旅の情緒をより一層深めてくれる逸品であった。

また、夜の滞在で重宝するのが『らーめん酒場やどり木』である。平湯温泉周辺は夜遅くまで営業している飲食店が少ないため、ここはラーメンと酒を共に楽しむことができる貴重な存在だ。近場で宿泊する際、冷えた夜の胃袋を満たすには最適の場所としておすすめしたい。

雪に埋もれる茅葺き屋根の風景と、芯まで温まる熱い濁り湯。そして古民家で味わう土地の食。平湯の旅は、厳しい自然と温かな情緒が共存する、奥飛騨らしい記憶を刻んでくれた。

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