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偶然出会えた温泉×読書のモダンな体験——仏生山温泉(香川県高松市)

四国を旅した帰路、香川県高松市で夜発の寝台特急サンライズ瀬戸に乗るまでの数時間をどう過ごそうかと考えていた。選んだのは、Googleマップでふと目に止まった日帰り温泉「仏生山温泉」。正直、時間つぶしのつもりだった。しかし、ここでの体験は予想を遥かに上回り、むしろこの温泉を目指して再訪したくなるほどの“当たり”だった。

企業のロビーのような温泉施設? #

仏生山温泉に一歩足を踏み入れた瞬間、驚いた。モダンで静謐な建物。まるで大学や企業の来客エントランスのような印象で、温泉施設にありがちな演出感は皆無だった。シンプルで洗練された空間に、「これはただ者ではない」と直感する。

湯船で読書——唯一無二の体験 #

この施設が特異なのは、建物だけではない。なんと、エントランスに設置された本棚から本を借り、湯船で読めるというコンセプトなのだ。しかも、気に入った本は購入も可能。湯に浸かりながら物語の世界に没頭する、そんな贅沢が日常価格で実現できる。

さらに驚くべきは泉質で、とろとろとした肌触りの湯は、源泉掛け流し。しかも加温されていない約30℃の湯船もあり、温泉ファンも唸る本物の泉質だ。モダン建築と読書コンセプトで注目を集めつつ、泉質単体でも全国レベルの実力を誇る。日帰り温泉でこのレベルは本当に稀有だ。

旅の締めくくりに、少しの惜しさも #

ただ一つ、惜しい点を挙げるなら、地元の人々の利用が多く、時間帯によってはやや騒がしいこと。読書に集中するには耳栓があった方が良いかもしれない。実は気に入って再訪した際、お気に入りの新刊を東京から持参して挑んだが、周囲が騒がしくて読書に集中できなかった。最初に訪れたときの、静かに読書していた観光客の姿が理想だっただけに、その落差が印象に残った。

鉄道旅とセットで #

アクセスもユニークで、仏生山温泉はローカル線で行くことができる。鉄道会社は「入浴券+乗車券」のセットチケットを販売しており、なんとそのチケットが“うちわ型”という遊び心。地元と鉄道と温泉がうまく連携している事例としても興味深い。

どんな人におすすめ? #

仏生山温泉は、温泉マニア・建築好き・読書家にはたまらない空間だ。静かな時間を求める人にとって、混雑する時間帯だけは避ける工夫が必要だが、それを上回るだけの魅力がここにはある。都市の喧騒を離れ、湯に浸かり、本に没頭する——そんな贅沢な時間を過ごしてみてはいかがだろうか。