温泉街の規模と歴史に圧倒される定番の地——有馬温泉(兵庫県神戸市)
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言わずと知れた名湯・有馬温泉。全国的に知名度が高く、日本三古湯のひとつとしても有名だ。筆者も例に漏れず、「温泉地を語るなら一度は訪れておくべき」という思いから足を運んだ。
訪問したのは『金の湯』『銀の湯』 #
有馬温泉を代表する2つの日帰り温泉施設、『金の湯』『銀の湯』を体験した。
『金の湯』はまさに定番中の定番。有馬温泉の象徴ともいえる茶褐色の湯を楽しめる。重厚感のある鉄分・塩分を含んだ湯は、まさに有馬らしさを体感できるものだった。ただし、観光地として非常に有名なだけあって混雑しており、入浴中はかなり人が多い。利用者が多いためか、若干の消毒臭が気になった点は惜しいところだ。
一方で『銀の湯』は、同じく公営の日帰り温泉施設ではあるが、こちらは無色透明な湯。泉質としては炭酸泉やラジウム泉で、見た目には地味ながら落ち着いた印象を受ける。観光客も『金の湯』に比べれば少なく、ゆったりと入浴できた。
温泉に色がついていると印象に残りやすいが、実はどんな湯でも湧出直後は無色透明であり、空気に触れることで酸化して色づくものが多い。有色の湯は鮮度がやや落ちている可能性もあるのだ。無色透明だからこそ感じる湯の新鮮さという側面もあり、『銀の湯』での静かなひとときに、そんなことを思った。
観光地としての魅力も強い #
有馬温泉の真価は、湯そのものだけでなく、温泉街の賑わいにもある。歴史ある建物と現代的な店舗が混在し、飲食店や土産物屋などが所狭しと並ぶ温泉街は、規模も活気も日本有数。温泉に入らずとも“温泉街を歩くことそのもの”が観光として成立するほどだ。
温泉街としての成熟度が高く、誰と訪れても何かしら楽しめる懐の深さがある。混雑を覚悟のうえで訪れれば、有馬ならではの魅力を存分に味わえるだろう。
総評 #
有馬温泉は、「日本の温泉文化の縮図」のような場所だった。温泉街の規模、歴史、湯の個性、すべてが揃っており、温泉地の“完成形”を体感できる。混雑や消毒臭といったマイナス面がありながらも、それを上回るだけの存在感を持つ名湯である。